夏目漱石

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夏目漱石『硝子戸の中』〈半信半疑で見つめる己のこころ〉

「雑記ブログ」への覚悟 本作は晩年の夏目漱石が連載したエッセイ集であり、漱石がこもる書斎を仕切る硝子戸の中で起こった事々、そして硝子戸越しに眺める世間との関わりに関する事々を徒然なるままに綴った「雑記ブログ」のような内容です。 ...
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『夏目漱石全集〈8〉5 of 5』【道草】〈海のものともつかず、山のものともつかず・・・〉

本作『道草』は漱石晩年に書かれた「私小説」であるそうですが、思えば私小説というのはナラティブ・セラピーの一種であるのかもしれません。作者のうちに蟠る黒い塊の出所を克明にアウトプットし、それが読み手の塊りと共鳴し合うことができればめ...
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『夏目漱石全集〈8〉4 of 5』【こころ】〈名もなき人々〉

「名無しさん」の物語 私は『こころ』を読んでいてふと疑問に思ったことがありました。なぜ登場人物はみなことごとく匿名なのだろう・・・と。物語の語り手はどこまでも「私」だし、実質的な主人公もどこまでも「先生」。その親友である「K」に至っ...
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『夏目漱石全集〈8〉3 of 5』【こころ】〈先生の罪〉

加害者「先生」 さて、『こころ』における最大の悲劇の主人公は誰でしょう? 親友を裏切った傷を20年もの長きにわたって引きずりつづけた「先生」でしょうか? それとも自らの弱さを前にして、苦悩の果てに自死を遂げた「K」でしょ...
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『夏目漱石全集〈8〉2 of 5』【こころ】〈エゴイズムの根っこ〉

「先生」と「私」 人はなぜ人につっかかりながら生きるのでしょう? なんだかずいぶんな物言いですが、人は良かれ悪しかれ他者に”つっかかり”ながら生きてはいないでしょうか? 人は頼まれもしないのに他人に興味を持っては良くも悪くも”...
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『夏目漱石全集〈8〉1 of 5』【こころ】〈人をつなぐものと縛るもの〉

人はなぜ死なないのか? 私は幼いころから疑問だったのです。 なぜ人は自殺をしないんだろう、と。 なんだか恐ろしいガキンチョだったように思われそうですが、べつにこんなことを始終考えていたわけではありません。...
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『夏目漱石全集〈7〉2 of 2』【満韓ところどころ・思い出す事など】〈思い出した事など〉

『満韓ところどころ』 本作は、読んでいるうちに煮詰まってしまいそうな『行人』、そしてそれ以前の『彼岸過迄』や『門』などと比べればホッとする、『吾輩は猫である』や『坊ちゃん』を思わせる平易かつ諧謔に満ちた文章が心地良い作品であります。...
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『夏目漱石全集〈7〉1 of 2』【行人】〈背教者かく語りき〉

兄は学者であった、また見識家であった。その上詩人らしい純粋な気質を持って生まれた好い男であった。けれども長男だけにどこかわがままなところを具えていた。自分から云うと、普通の長男よりは、だいぶ甘やかされて育ったとしか見えなかった。...
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『夏目漱石全集〈6〉』【門・彼岸過迄】〈記憶してください、私はこんなふうにして生きて行くのです〉

『門』  二人はとかくして会堂の腰掛ベンチにも倚よらず、寺院の門も潜らずに過ぎた。そうしてただ自然の恵から来る月日と云う緩和剤の力だけで、ようやく落ち着いた。時々遠くから不意に現れる訴えも、苦しみとか、恐れとかいう残酷の名...
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『夏目漱石全集〈5〉』【三四郎・それから】〈すべて身に覚えのある痛みだろう?〉

本巻に収録されるのは『三四郎』と『それから』。ともに平易な文体が読み易く、殊に『虞美人草』などと比べれば格段の親しみ易さであります。しかし私にとっては本巻、とくに『三四郎』が最も読み始めるに際しての敷居が高かったのです。なぜなら本作を形容...
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