Ood〈ウード〉

カフカ

カフカ『変身』 世界の異物になるとき。世界が異物になるとき。

ある日突然大きな毒虫に変身した青年グレゴール・ザムザの顛末を描く『変身』。現代社会に置き換えるならば例えば「引きこもり」や「うつ病」、はたまた「認知症」など、一般的な生活からかけ離れてしまった人々とのかかわりの難しさ、痛ましさ等と...
ヘッセ

ヘッセ『シッダールタ』考察 その痛みは、やがて輝く

仏陀と同じ名を持つ男シッダールタのこころの遍歴を描く物語。 悟りを目指し、覚者仏陀の言葉に打たれたシッダールタ。しかし彼は仏陀の弟子とはならず、ひとり己の道を進むことを決心します。 いったいなぜ? ...
ゲーテ

ゲーテ『若きウェルテルの悩み』〈こんなものが、恋でたまるか〉

この小説は発表された18世紀のドイツ分断にとてつもない衝撃を与えた作品であったと言います。手元にある新潮文庫『若きウェルテルの悩み』巻末解説によれば本作は「これまでの小説の常識を完全に打ち破る作品」であり、更には「この作品によって自殺が流...
夏目漱石

『夏目漱石全集〈8〉5 of 5』【道草】〈海のものともつかず、山のものともつかず・・・〉

本作『道草』は漱石晩年に書かれた「私小説」であるそうですが、思えば私小説というのはナラティブ・セラピーの一種であるのかもしれません。作者のうちに蟠る黒い塊の出所を克明にアウトプットし、それが読み手の塊りと共鳴し合うことができればめ...
夏目漱石

『夏目漱石全集〈8〉4 of 5』【こころ】〈名もなき人々〉

「名無しさん」の物語 私は『こころ』を読んでいてふと疑問に思ったことがありました。なぜ登場人物はみなことごとく匿名なのだろう・・・と。物語の語り手はどこまでも「私」だし、実質的な主人公もどこまでも「先生」。その親友である「K」に至っ...
夏目漱石

『夏目漱石全集〈8〉3 of 5』【こころ】〈先生の罪〉

加害者「先生」 さて、『こころ』における最大の悲劇の主人公は誰でしょう? 親友を裏切った傷を20年もの長きにわたって引きずりつづけた「先生」でしょうか? それとも自らの弱さを前にして、苦悩の果てに自死を遂げた「K」でしょ...
夏目漱石

『夏目漱石全集〈8〉2 of 5』【こころ】〈エゴイズムの根っこ〉

「先生」と「私」 人はなぜ人につっかかりながら生きるのでしょう? なんだかずいぶんな物言いですが、人は良かれ悪しかれ他者に”つっかかり”ながら生きてはいないでしょうか? 人は頼まれもしないのに他人に興味を持っては良くも悪くも”...
夏目漱石

『夏目漱石全集〈8〉1 of 5』【こころ】〈人をつなぐものと縛るもの〉

人はなぜ死なないのか? 私は幼いころから疑問だったのです。 なぜ人は自殺をしないんだろう、と。 なんだか恐ろしいガキンチョだったように思われそうですが、べつにこんなことを始終考えていたわけではありません。...
夏目漱石

『夏目漱石全集〈7〉2 of 2』【満韓ところどころ・思い出す事など】〈思い出した事など〉

『満韓ところどころ』 本作は、読んでいるうちに煮詰まってしまいそうな『行人』、そしてそれ以前の『彼岸過迄』や『門』などと比べればホッとする、『吾輩は猫である』や『坊ちゃん』を思わせる平易かつ諧謔に満ちた文章が心地良い作品であります。...
夏目漱石

『夏目漱石全集〈7〉1 of 2』【行人】〈背教者かく語りき〉

兄は学者であった、また見識家であった。その上詩人らしい純粋な気質を持って生まれた好い男であった。けれども長男だけにどこかわがままなところを具えていた。自分から云うと、普通の長男よりは、だいぶ甘やかされて育ったとしか見えなかった。...
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