夏目漱石 『夏目漱石全集〈8〉1 of 5』【こころ】〈人をつなぐものと縛るもの〉 人はなぜ死なないのか? 私は幼いころから疑問だったのです。 なぜ人は自殺をしないんだろう、と。 なんだか恐ろしいガキンチョだったように思われそうですが、べつにこんなことを始終考えていたわけではありません。... 2023.07.01 夏目漱石
夏目漱石 『夏目漱石全集〈7〉2 of 2』【満韓ところどころ・思い出す事など】〈思い出した事など〉 『満韓ところどころ』 本作は、読んでいるうちに煮詰まってしまいそうな『行人』、そしてそれ以前の『彼岸過迄』や『門』などと比べればホッとする、『吾輩は猫である』や『坊ちゃん』を思わせる平易かつ諧謔に満ちた文章が心地良い作品であります。... 2023.07.01 夏目漱石
夏目漱石 『夏目漱石全集〈7〉1 of 2』【行人】〈背教者かく語りき〉 兄は学者であった、また見識家であった。その上詩人らしい純粋な気質を持って生まれた好い男であった。けれども長男だけにどこかわがままなところを具えていた。自分から云うと、普通の長男よりは、だいぶ甘やかされて育ったとしか見えなかった。... 2023.07.01 夏目漱石
夏目漱石 『夏目漱石全集〈6〉』【門・彼岸過迄】〈記憶してください、私はこんなふうにして生きて行くのです〉 『門』 二人はとかくして会堂の腰掛ベンチにも倚よらず、寺院の門も潜らずに過ぎた。そうしてただ自然の恵から来る月日と云う緩和剤の力だけで、ようやく落ち着いた。時々遠くから不意に現れる訴えも、苦しみとか、恐れとかいう残酷の名... 2023.07.01 夏目漱石